『翼が消えた天使』 第一部






プロローグ



 長い回廊の先に扉が見えた時 ――――― ふと、不安が身体を支配する。


 ――――― あの扉に、このまま歩を進めていってもいいの?

 ――――― その扉に、手をかけて押し開いてもいいの?


 ――――― この扉の・・・先の世界に、 足を踏み入れてしまってもいいの ――――― ?


「・・・くすっ」

 思わずそんな考えに笑いを浮かべてしまい、彼女はまるで気恥ずかしさを感じたかのように 視線だけを泳がせ、辺りを確認してしまう。

(・・・だめね。ここには他には誰もいないのに・・・)


 初めて扉をくぐったのは、もう遠い昔のことのように感じられた。

 自分では、何がなんだかわからぬままに、知らないところで話だけが進められていき、 気が付いた時には家族や友人達に見送られて・・・そしてその翌日には、 この扉の前に立たされていたのである。
 故郷から彼女を案内してくれた見知らぬ女性の方は途中で姿を消し、彼女を扉へと導いて くれたのは、まるで聖母のような微笑を浮かべた、神秘的でそして気高い輝きを放つ女性。

(・・・そういえば、はじめは『あの人こそが女王様だ』 なんて思ったんだっけ・・・)


 ――――― 次元を超える扉・・・


 普通に生活していたならば、こんな扉の存在さえも知らなかったかもしれない。
 まして、その扉をくぐることになるなんて・・・

(でも、その時はあまり不安なんて感じなかったんだっけ・・・)

 あまりに突然の出来事で、不安を感じる暇なんてなかったのかもしれない。

 それに、あの時は・・・一人じゃなかった。

 この扉の先の世界の時の流れが、今まで過ごしてきた世界のものと違うことなど、頭の中では わかっていたものの、その本当の意味がまだ理解できていなくて・・・


 ――――― 不安ダヨ・・・


 ――――― 平気、ダナンテ嘘ハツカナイ。


 嘘はつかない。
 それでも、自分で決めたことだから・・・

 今度は ――――― 自分自身の意志で、たった一人で扉を開くと決めたんだから ―――――






『翼が消えた天使』 第一部 第一話に続く・・・






あとがき・・・


 ・・・とうとうアンジェ長編小説の連載もスタートです。
 まあ、この小説にについては(も?)色々と語るべきところがありまして・・・
 それらについては、ここのあとがきを利用して追々語っていくことになると思います。

 ストーリー設定としましては、うーん。書いちゃっていいのかな・・・
 あ、でも、よく考えたら小説ページへの扉の解説欄とかに、ある程度のところは 書いちゃってますよね・・・きっと(汗)
 一応主人公はリモージュ・・・ってことになってます。
 詳しくは・・・これについても追々。  





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